『GFP Bunny』あの”新しい神様”土屋豊監督の新作を特別スニーク・プレビュー!

監督・脚本:土屋豊、出演:倉持由香、渡辺真起子、古館寛治、Takahashi、日本、2012、83分、

特別スニーク・プレビュー!

8/12 (sun), 23:00~ 野外トレーラー・シアター(1回のみ特別上映)

2005年にタリウムによる母親毒殺未遂事件を起こして世間を騒がせた、いわゆる「タリウム少女」をモチーフとした16歳の少女が主人公のメタフィクション。物語は、[少女]と声のみで登場する[監督]との対話によって進行して行く。

科学に異常な関心を示す[少女]は、様々な生物を観察、解剖し、その様子を動画日記としてYouTubeにアップロードしている。彼女は自身が通う高校で壮絶なイジメにあっているが、そのこと自体も観察対象にして、自分で自分を観察するような感覚で生きている。

[少女の母親]は、アンチエイジングに明け暮れている。老いて行く自分を受け止めきれない彼女は、精神的に不安定な日々を送っている。そんな彼女もまた[少女]の実験対象となり、毒薬を少しずつ投与される。

[少女]はインターネットを介して遺伝子工学の最新技術やバイオ・アート(バイオテクノロジーを用いた芸術)の思想に触れる。そして、母親が行なう美容整形と遺伝子操作の違いや食用の魚と観賞用の魚の違いについて、彼女なりの視点で答えを見つけようとして行く。

[少女]の動画日記と並行して、様々な人物へのインタビューがドキュメンタリーとして挿入される。内臓が透けて見える透明ガエルを発明した生物学者は、次の目標は光るカエルを作ることだと話す。某団体の代表は、プログラムとしての人間観を披露する。頭部や顔面にシリコンや金属をインプラントした身体改造アーティストは、GPS付のICチップを手のひらに埋め込み、自分で自分をコントロールするのだと宣言する。

[監督]はこれらの話を感覚的に理解できないが、世界を檻だと感じていた[少女]は、人間のフォーマットを変えることに希望を見い出す。そして[少女]は、自らを取り囲む世界を飛び越えるために、母親への毒薬投与実験を中止し、自分自身を対象とした新しい実験を始めることにする。新しいアイデンティティーを獲得するための冒険の旅に出る。

「監視・マーケティング社会」、「キャラクター化するアイデンティティー」、「バイオテクノロジー」をテーマに「システムと人間」、「プログラムと生命」について新しい観点から考察した、日本インディー映画界の鬼才土屋豊の待望の新作。できたての新作を、各国映画祭や劇場公開に先行して特別スニーク・プレビュー上映!

 

[企画意図]

「システムと人間」、「プログラムと生命」について新しい観点から考察を加える為に、私は、本作を企画しました。企画の柱は、「監視・マーケティング社会」、「キャラクター化するアイデンティティー」、「バイオテクノロジー」の三つです。

近年、監視・マーケティング社会の進展は著しく、私たちの生活や消費行動は、監視カメラやポイントカード、携帯電話やインターネットのIPアドレスによって、管理・誘導されています。私たちは生身の人間としてではなく、コード化されたデータとして、逃れられないシステムの中に捉えられていると私には思えます。

そんな状況を象徴するかのように、今、アイデンティティーのキャラクター化が進んでいます。人々は、膨大なデータベースから自らのアイデンティティーを形成する要素を取り出し、それらを組み合わせることによって、かろうじて「自分」という個人を成り立たせているという気がしてなりません。

インターネット上のアバターと生身の人間の境界線が日に日に曖昧になって行く現在、私たちはどのようにしてこのシステムから逃れたら良いのでしょうか?どうしたら、決められたフォーマットを飛び越えることができるのでしょうか?

そのひとつのヒントを、私はバイオテクノロジーに見い出します。バイオテクノロジーが示してくれるプログラムとしての生命観に、ある種の希望を感じるのです。

バイオテクノロジーは、ヒトゲノム(人間の全遺伝情報を記したDNAの総体)の研究によって、人間の設計図を明らかにしました。私たちは、自分を改変可能なプログラムだと自覚することによって、新たなアイデンティティーを獲得することができるのではないでしょうか?そして、そのことによって、逃れられないシステムを飛び越え、自分で自分をコントロールする視点を手に入れることができるのではないでしょうか?

以上のようなことを観客に投げかけることが、本作の目的です。(土屋 豊)

 

【プロフィール】

[監督・脚本]

土屋 豊(つちやゆたか)

1966年生まれ。1990年頃からビデオアート作品の制作を開始する。

同時期に、インディペンデント・メディアを使って社会変革を試みるメディア・アクティビズムに関わり始める。

1998年より、インディペンデント・ビデオの普及・流通をサポートするプロジェクト「ビデオアクト」を主宰。

1999年、異色の長編ドキュメンタリー『新しい神様』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で国際批評家連盟賞特別賞を受賞。劇場公開でもロングランを記録。2003年、初の長編フィクション『PEEP “TV” SHOW』がロッテルダム国際映画祭で国際批評家連盟賞、モントリオール国際ニューシネマ映画祭で最優秀長編映画賞を受賞するなどし、海外でも劇場公開され、国際的な注目を集めた。

 

<主な監督作品>

『あなたは天皇の戦争責任についてどう思いますか?』(1997年/53分)

山形国際ドキュメンタリー映画祭、台湾国際ドキュメンタリーフェスティバル等、正式出品

『新しい神様』(1999年/99分)

山形国際ドキュメンタリー映画祭にて国際批評家連盟賞特別賞受賞

ベルリン国際映画祭、香港国際映画祭、ウィーン国際映画祭、台北金馬映画祭、全州国際映画祭等、正式出品

[公式サイト]http://www.st.rim.or.jp/~yt_w-tv/kamisama.html

『PEEP “TV” SHOW』(2003年/98分)

ロッテルダム国際映画祭にて国際批評家連盟賞受賞

モントリオール国際ニューシネマ映画祭にて最優秀長編映画賞受賞

ハワイ国際映画祭にてNETPAC特別賞受賞

ミュンヘン映画祭、香港国際映画祭、ウィーン国際映画祭、シカゴアンダーグラウンド映画祭、オスロ国際映画祭、ブリスベン国際映画祭、バンコク国際映画祭、ローマ映画祭、全州国際映画祭等、正式出品多数

[公式サイト]http://www1.cts.ne.jp/~w-tv/peeptvshow.html

<プロデュース作品>

『遭難フリーター』(監督:岩淵弘樹/2007年/67分)

山形国際ドキュメンタリー映画祭、香港国際映画祭、レインダンス映画祭等、正式出品

[公式サイト]http://www.sounan.info/

[出演者]

倉持由香(少女)

渡辺真起子(少女の母親)

 

 


古舘寛治(教師)


Takahashi(身体改造アーティスト)


 

【製作】

土屋 豊(W-TV OFFICE)

e-mail: yt_w-tv@st.rim.or.jp

 

本作品上映にあたり作品を提供してくださった土屋豊監督に、こ の場を借りて心より御礼申し上げます。

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