監督:アメール・ショマリ&ポール・コーワン。出演:アリソン・ダーシィ、ロザン・ネレンバーグ、ホーリー・オブライアン、ヘイディ・フォス。パレスチナ|カナダ|フランス。ドキュメンタリー、2014年、75分。英語字幕&日本語バリアフリー字幕付き。日本限定配信。
実写とアニメーションを織り交ぜながら語られる、18頭の牛たちの世にも奇妙な物語。1980年代後半、パレスチナ自治区ヨルダン側西岸地区ベイト・サフールの住民たちが、自給自足を目指してイスラエルのとあるキブツ(農業共同体)から秘密裏に牛を買う。乳業はパレスチナ人には許されていない産業の一つなのだ。パレスチナ人が自分たちの牛乳を生産・供給するこの事業は大成功、そうなるとイスラエル軍に目をつけられ、18頭の牛たちは、イスラエルの国家安寧への危険分子として指名手配される。牛たちは地下に潜り、ミルクは「インティファーダ・ミルク」と呼ばれ、第一次インティファーダの自由と抵抗のシンボルになっていく。アニメーションと語りをベイト・サフールからの難民としてシリアで育ったマルチアーティストのアメール・ショマリが担当、カナダ人のベテラン映像作家ポール・コーワンとのコラボで、当時の運動家、イスラエルの役人、そして牛たちの視点から、草の根抵抗運動の現実が瑞々しく再現される。
トロント国際映画祭正式招待、アブダビ映画祭ドキュメンタリー最優秀作品賞、アルジャジーラ国際ドキュメンタリー映画祭ドキュメンタリー・チャンネル長編作品賞、パレスチナのアカデミー賞エントリー作品。
アメール・ショマリ:パレスチナ人アーティスト。西岸地区のビルゼイト大学とラマラのZANスタジオでマルチメディアアーティストとして活動。パレスチナ解放とその話し合いのために、アートとテクノロジーを駆使したポスター、政治的なイラスト、ショートアニメーションなどを制作している。
ポール・コーワンは経験豊かなユダヤ系カナダ人の実力派映像作家。70年代から2009年まで勤務したカナダ国立映画庁(NFB)で製作した作品も、その後の作品も、多くが物議をかもす話題を取り上げており、アカデミー賞ノミネート、ジニー賞受賞などの作品が並ぶ。撮影監督としてもアカデミー賞を受賞している。