かくれん坊』 Hide-and-Seek
日本/2012/日本語/白黒/8分/アニメーション/英語字幕付き上映
監督:白石慶子、 音楽・音響:横山夏子、アンドレス・ドゥアルテ・ロサ
この町は、海と山に恵まれた住宅地。あの日から、この町は真っ暗になった。闇のなかにかくされたのは町明かり、家路、母、おなかのなかの子ども。かくれんぼしている事実を描いた真実のアニメーション。東日本大震災を通じて、「フィクションを超えてしまった現実や実写映像を元に、アニメーションに出来ることで更にその現実を超えられたら」という思いで制作された、白石慶子監督の東京芸術大学大学院映像研究科修了作品。バンクーバー国際映画祭招待作品、ライプチヒ国際ドキュメンタリー・アニメーション映画祭入賞、イメージフォーラム ヤング・パースペクティヴ2012入賞、いばらきデジタルコンテンツ・ソフトウェア大賞2012優秀賞、東京国際アニメフェア2013 東京アニメアワード入賞他。
白石慶子監督バイオ、ステイトメント
企画制作を行っていた時期に、震災が起きた。テレビやインターネットから流れる実写映像は、どれも想定外と言われるような見たことのない未知の現実で、現実がフィクションを超えてしまった瞬間だった。そんな現実の最中、アニメーションで何を作り、アニメーションは何を見せることが出来るのか。
まずは被災地に行き、現地で実写映像の撮影を行った。また、被災者で茨城県日立市に住んでいる20年来の友人女性と、日立製鉄所で働いている彼女の旦那さんに対して、取材を行った。そして、実写の素材を加工するのではなく、実写の素材を元にロトスコープ等で足し算・引き算をしながら描いた。
例えば、影・闇の表現である。影は、母にとって不安の象徴であり、おなかのなかの子どもの具現化でもある。闇は、雲に覆い尽くされるイメージであり、津波に飲み込まれるイメージであり、或いは放射線のイメージでもあるかもしれない。
映像は視覚と聴覚の媒体であるが、カメラや目、マイクや耳には、視聴できないものが現実には存在する。殊に、東日本大震災以降は、そういった五感で感じられない存在があることが意識されるようになったことと思う。そのとき、実写映像は現実を写すことが出来るが、アニメーションは実写映像には撮れない現実感を描くことが出来る。これは、アニメーションという媒体を通して現実を表現する、大きな意義の一つであると私は考えている。