『悪夢の香』 (原題:Mababangong Bangungot 英題:Perfumed Nightmare) フィリピン、95分、1977、ドキュドラマ。監督:キッドラット・タヒミック。中国地方初公開。21日の回、監督来場&ゲストトーク!
フィリピンのインディペンデント映画の父と呼ばれるキッドラットの作品は、独立心と遊び心に満ちている。彼の鮮烈なデビュー作品『悪夢の香』では、監督が自演するアメリカ大好きのジープニー(リサイクル鉄屑から作られたカラフルなフィリピンのタクシー)運転手キッドラットが、村を訪れていたアメリカ人のチューインガムビジネスを手伝うため、ジープニー持参でパリに引っ越し、いざアメリカに進出するまでを描いたドキュメンタリー・フィクション・ハイブリッド作品。監督自身の声で語られるナレーションでは、地元の村文化への愛着やキッドラットの母が息子に語りつぐ独立の歴史、スペインからの独立の志士でありその後アメリカ兵に殺されたキッドラットの父(やはり街の運転手)の話などが語られる。最初、ナレーションのキッドラットの声と演ずるキッドラットの行動は合致しない。しかし実際に西洋を訪れ、初めて触れるエスカレーターや自動ドアに魅了されながらも、資本主義の矛盾やその中で潰されていく街の小市民たちを目の当たりにし、地元文化への郷愁を覚えていくうち、映画の声と映像の中のキッドラット二人の姿が重なっていく構成。イマジネーションと創造性と問題提起の精神と映画への愛に富んだ、40年経っても色褪せないインディペンデント映画界の傑作。
超おもしろそうな彼の新作はこの8月「あいちトリエンナーレ」でプレミア(この秋日本全国公開)、それに合わせて、愛すべきキャラクターのキッドラット監督が、なんと、UPAFに来場(21日晩の回)!ドント・ミス・イット!
対象年齢:暴力はありませんが、男の子への割礼のシーン描写は詳しくあり。セックス描写なし。日本語の字幕さえ読めて(オリジナル言語:英語)、割礼シーンさえ大丈夫だったら、何歳でもお楽しみいただけます。