1970年前後、日本全国各地に“新しい街”としてニュータウンが数多く生まれた。それらは、日本の高度経済成長を背景に多くの国民の夢や希望を乗せて羽ばたいていった。しかしながら、高度経済成長の終焉と合わせるかのように、ニュータウンは曲がり角を迎えようとしている。
本作『ニュータウン物語』は、岡山県赤磐郡山陽町山陽団地というニュータウンで育った監督である本田孝義が、再びその地を訪れ、自らの思いを重ね合わせながらニュータウンの歩みをたどるドキュメンタリー映画である。
昨今、ニュータウン、あるいは郊外のあり方について、様々なことが議論されるようになった。しかしながら、ニュータウン育ちの本田孝義は、そこで暮らしてきた人々が何を感じながら生活してきたのかが十分には語られていないことにかねてから不満を持っていた。そこで、本田はカメラを片手に様々な人々に出会っていく。語られる話は、どこにでもありそうな「普通」の話であるだろう。だが、普通の話ほど語られにくく、かつ残っていかないこともまた確かである。
監督の本田孝義は、長編ドキュメンタリー(今作が3作目にあたる)の製作だけでなく、短編、あるいは美術展への出品など多彩な活動を行ってきた。今作のラストシーンとして、自らが実行委員長となり、大規模な美術展を実現し、自らの活動の集約も見せている。また、メールマガジン・ドキュメンタリー映画専門誌NEO誌上において、本作の製作ルポを同時進行で執筆し好評を得た。
2001年4月からデジタルビデオによる自主製作として撮影が始まった本作は、約2年の製作期間を得て、文化庁の支援により最終的に監督初の16mmフィルム作品として2003年2月完成(103分)した。(映画ホームページより)
重松清氏(作家)評ー抜粋 ー “…高みからニュータウンを考えるんじゃなくて、ニュータウンの中で、まさに中からの目線を原風景として持っている本田さんが外から入ってきて撮るっていうさあ、そこだと思うんだよね。ニュータウンってなかなかふるさとらしくない街並みなんだけど、明らかにでもふるさととして残ってるところがあるんだなあ、と思って、何かうれしくなっちゃったね。(全部読む)