何も知らない夜

1/11(土)18:30 宇野会場 & 1/13(月)19:30 岡山会場(各定員20名)、岡山初公開!

いい映画からアジアの隣人を知る(インド編)。カンヌグランプリ受賞のインド人女性監督の美しいハイブリッドドキュメンタリー

チケットを購入する


監督:パヤル・カパーリヤー(Payal Kapadia)| インド、フランス | 2021 | 100分 | ハイブリッド・ドキュメンタリー | ヒンディー語・ベンガル語 | 英語・日本語字幕付き(バリアフリーではありません)| 鑑賞券:1200円

映画を学ぶ学生のL(エル)が恋人へあてた手紙が学生寮の片隅で発見された。女性の朗読に託された架空の物語は、Lの恋愛の破局の背後にあるカースト制へと導かれ、さらに2016年に実際に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件へと接続される。若者の日常の光景、Lの悲恋の逸話、路上デモや警官との衝突のシーンにおける緊迫した闘争の様子がモノクロームの映像の中で融合し、フィクションと現実が境界をなくしていく。

舞台であるインド映画テレビ研究所(Film and Television Institute of India)はインド西部マハーラーシュトラ州にあるインド政府から全面的に支援を受ける公立大学で、安い授業料で映画が学べる。監督自身が当時そこの学生で、激動の時代を生きた。学生運動の映像は、クラスメートたちが撮影したもの。卒業し、就職し、もう使わないからと集められたものだという。そのたった数年前の熱かった時代の映像がアーカイブ映像に見えるように、カパーリヤー監督は特殊効果を加えている。そして映画全体で描かれるのは、社会変革を望む学生たちの情熱と信念、彼らの映画への愛(伝統的に左派の大学と思われ、エイゼンシュテイン、プドフキン、ゴトク、黒沢などが登場)、その一方で社会の基礎的単位である家族に立ち向かえない矛盾だ。そしてそれを包むのが、カースト制度で引き裂かれる悲恋の物語。カーストを容認しているインド左派への、深い場所での批判と、学生運動を激しく弾圧する極右政府への恐怖が感じられる。モディ政権はいまだ健在である。インドはこれからどこへ行くのか。

パヤル・カパーリヤー監督の次作であるドラマ作品『All We Imagine as Light』は、2024年カンヌ映画祭のグランプリに輝いている。『何も知らない夜』も、彼女独特の詩的で美しいストーリーテリング技法が光るハイブリッド作品。インドの現在に興味がある人も、映画ファンにも必見の作品。

2021年カンヌ映画祭「ゴールデン・アイ」最優秀ドキュメンタリー賞受賞(監督週間正式招待)
同年トロント国際映画祭 Amplify Voices賞、釜山国際映画祭釜山シネフィルアワード受賞
2023年山形国際ドキュメンタリー映画祭 ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)